犬に最も欠かせない栄養素がタンパク質です。
タンパク質は、血や骨、筋肉、皮膚、被毛など基本的な犬の体を作り、代謝と免疫力を保つ大事な栄養素です。
ドッグフードではよく高タンパク質のものが推薦されていますが、 そもそも、
「タンパク質ってなに?」「何の肉を与えたらいいの?」・・・と思っている飼い主さんもいるのではないでしょうか?
そこで今回は、タンパク質についての基本をまとめてみました。
この記事の内容
犬の栄養素「タンパク質」とは?栄養素としての役割
タンパク質とは、犬の必須栄養素の1つです。
筋肉・臓器・皮膚・被毛・血液など犬の体の大部分はタンパク質で構成されています。
犬の場合、丈夫な筋肉の維持のため人間以上に多くのタンパク質量が必要となります。
タンパク質は20種類のアミノ酸から構成されていて、アミノ酸の数や種類、組み合わせによって働きが異なり、ホルモンや酵素、免疫物質など様々な機能を担っています。
しかし、20種類のうち10種類は”必須アミノ酸”と呼ばれ、体内で必要量を合成できないため、食事から摂取する必要があります。
犬がタンパク質不足になるとどうなる・・・?
たんぱく質が不足すると、栄養不足になってしまいさまざまな悪影響があります。
タンパク質不足による主な症状は、
- 筋肉量が減り、体温低下
体温が下がると血流が悪くなり、同時に免疫力も低下し様々な病気になりやすくなります。
さらに、がん細胞の働きが活発になります。
- 健康的な被毛・皮膚が作れなくなる
被毛の艶の衰えやパサつきが見られ、皮膚は乾燥し皮膚病にかかりやすくなります。 - 関節炎・関節痛
骨がもろくなって関節が保護できなくなり、関節痛を起こしやすくなります。
動くことが辛くなると、お散歩が困難になり肥満にも繋がります - 内蔵機能の低下
内臓の機能が落ちると、疲労感を感じやすく体の調整がスムーズにいかなくなります。
- 幼犬の発育不良
成長期の幼犬の身体・脳の発育速度と免疫反応が遅れる恐れがあります。
このように、タンパク質が不足すると様々な健康被害を引き起こす可能性があります。
そして、どんな病気に対しても大切なのが「免疫力」です。
タンパク質には、体内に侵入した異物を撃退する細胞や免疫機能を作りだす働きがあります。
免疫システムの主役を担う栄養素でもあるのです。
普段あたえているドッグフードで栄養失調!?
しっかりと毎日ドッグフードを与えていても、気が付かないうちに、犬が栄養失調になっていることもあります。
栄養失調と聞くと、毛が抜けたり骨張るほど痩せ細った状態を想像すると思いますが、他にも「不眠」「歯が欠ける・抜ける」 「毛艶が悪くなる」「疲れやすく散歩を嫌がる」などの症状があります。
一見、栄養失調とは関係がなさそうですが、これらの症状も栄養不足からきていることが多いのです。
ドッグフードを普通に与えているのに犬の様子がおかしいと感じたら、外見からはわかりにくい”隠れ栄養失調”になっているのかもしれません。
ドッグフードの原材料を確認する!
動物性タンパク質や脂質が少なすぎるドッグフードが原因で栄養失調になっている場合があります。
まず、ドッグフードの原材料・成分表示を確認してみましょう。
ホームセンターやスーパーなどで販売しているドックフードは、肉などのタンパク質より穀物類が多く入っているものがほとんどです。
穀物は犬にとって消化吸収を苦手とする食材で、栄養的価値も少ないのです。
元々肉食動物の犬には、消化吸収がしやすく、良質な肉原材料が豊富に含まれた高タンパクな食事が理想とされます。
ドッグフードを選ぶときは原材料の一番上をチェックしましょう。
原材料は多く含まれている順番に表記されているので、穀物がメインで使われているものは選ばない方が良いです。
基本的に動物性タンパク質が30~50%含まれているのが良質なドッグフードと言われています。
犬の一日のタンパク質必要量は?
ドッグフードの品質基準はアメリカのAAFCOという機関が定めており、その基準によると犬に必要なタンパク質量を摂取する為には、成犬で18.0%以上、成長期の子犬で22.5%以上のタンパク質含有量の製品と規定されています。
しかし、あくまでドッグフードを製造するうえで最低限守らなければならない基準であり、原材料の品質やタンパク質の種類までは定めがありません。
ということは、タンパク質源がトウモロコシや小麦などの穀物類(植物性タンパク質)であっても基準の数値を満たしていればクリアということです。安価な製品だと、添加物や粗悪な原材料を使ってデータ上の数字だけ、無理やり基準値に合わせている可能性もあるのです。
必ずしも「AAFCO承認」「総合栄養食」などと書かれているドッグフードが安全とは言い切れませんね。
たんぱく質は高ければ高いほど良いという訳ではありませんが、愛犬の健康に悪影響のない範囲で、ライフステージに合った必要な量を与えることが大切です。
【成犬時の1日タンパク質推奨摂取量】
4.3g~5.0g×代謝体重(体重kgの0.75乗)
犬のタンパク質の供給源は大きく2つ!
タンパク質を含む原材料は下記の2つに分けられます。
動物性タンパク質
- 肉類
- 魚類
- 卵
- 牛乳
- チーズなど
植物性タンパク質
- 小麦
- 大豆
- 芋類
- トウモロコシ
- 米など
タンパク質は消化率が高いものほど品質が評価されます。
犬の消化器は活発で腸は短いので、体内でより早く消化・吸収され栄養豊富なものが良いとされます。
そうなると、消化が困難な植物性たんぱく質よりも動物性たんぱく質のほうが犬の体に適していると考えられますね。
また、穀類や野菜では犬が必要とする必須アミノ酸をすべて供給することが出来ません。
犬用のサプリメントなどで補給することもできますが、栄養バランスのとれたフードを与えていればサプリメントの必要はありません。
たんぱく質源 | 消化率 |
卵 | 100% |
肉類 (魚、鶏肉) | 94% |
臓器肉 (腎臓、肝臓) | 90% |
牛乳、チーズ | 89% |
大豆 | 78% |
小麦 | 64% |
トウモロコシ | 54% |
表のように、動物性タンパク質の方が栄養になりやすいことがわかります。
消化率が低いと、その分内臓の働きも過剰になり負担がかかる結果となっていまいます。
良質なタンパク質と粗悪なタンパク質
いくらタンパク質であっても、良質なタンパク質でないと意味がありません。
ドッグフードの原材料を見たとき、はっきり何の肉を使っているのか明記されていないものは危険と言わざるを得ないのです。
基本的に、肉類、〇〇ミール、〇〇ミート、などと表記されているものは肉副産物や4Dミートの疑いがあるため、注意が必要です。
4Dミートとは?
DEAD(死んだもの)、DISEASED(病気だったもの)、DYING(死にかけたもの)、DISABLED(障害を持っている)を総称した呼び名で、これは人間が食べられない肉とも言われています。
また、肉と言っても原材料に使われる部位は、食肉部分のみとは限りません。
肉副産物は食肉以外の、内臓、骨、血液、とさか、皮、くちばし、爪、羽などの栄養にならない部分のことをいいます。
人が食べれない物を犬に与えて良いわけがありませんよね。
一概には言えませんが、市販で売られている安価なドッグフードにはこういった粗悪な肉が使われていることが多いです。
飼い主さんが正しい知識を持って、良質なドッグフードを見極めることが大切です。
犬に与えるタンパク質(肉)の食材と栄養素
動物性タンパク質にもさまざまな種類があり、人と同じく味の好みも犬によってバラバラです。
毎日の食事なので、愛犬にはなるべく美味しいと思って貰えるものをあげたいですよね。
当たり前のことですが、相性の悪いドッグフードを食べれば、体重の増減、下痢や軟便、被毛の悪化など様々な変化が見られます。
また、犬種や体質によってはアレルギーを引き起こしてしまうものもあるので注意が必要です。
心配な方は事前にアレルギー検査をするか、少量から与えてみるようにしましょう。
タンパク質の量だけにこだわらず、質や相性にも十分目を向けて選びましょう。
牛肉
牛肉には、良質なタンパク質を始め、鉄や亜鉛、リンなどのミネラル、ビタミンB1、B2、B12といったビタミンも豊富に含まれています。
アミノ酸の一種のタウリン、色素タンパク質のミオグロビンなど、血圧の降下や貧血の予防にも効果的です。
また、牛肉には犬の消化・吸収を手助けする酵素が含まれています。酵素には免疫力を付けたり、肥満を抑制したりする働きがあります。
そして、犬にとって肉類の中でも牛肉が一番嗜好性が高いと言われています。
おすすめ
- 成長期の幼犬
- 活動量の多い犬
鶏肉
鶏肉は、消化吸収に優れており、味も淡白な分低脂肪でヘルシーなお肉です。
アミノ酸のバランスが良く、コラーゲンが豊富に含まれていることでも有名で、皮膚や関節の働きを助けてくれます。
また、ビタミンAに関しては牛肉の10倍・豚肉の3倍含まれており、皮膚や粘膜を強化し、免疫力をアップしてくれる効果が期待できます。
肉類の中でも多くのドッグフードの主原料として使用されています。
おすすめ
- シニア犬
- 被毛、皮膚のトラブル改善・予防
豚肉
豚肉にはビタミンB群が豊富に含まれおり犬の身体づくりにさまざまなメリットがあります。
ビタミンB1は、疲れの元となる乳酸が体内に溜まるのを防いだり、体力増強や夏バテ予防にも効果があるといわれています。
また、ナイアシン(ビタミンB2)には、皮膚や粘膜の健康を維持する働きや、神経系を健康に保つ作用もあります。
おすすめ
- 成長期の幼犬
- 活動量の多い犬
- 食欲の落ちた犬
馬肉
馬肉は低カロリー・低脂肪であり、アレルギーリスクの低いお肉です。
栄養素はとても高いのにカロリーは豚肉や牛肉の約半分、脂肪は約5分の1ほどになります。
また、他の動物脂には殆ど含まれないオメガ3、オメガ6等の必須脂肪酸が多いのも特徴です。
これらの必須脂肪酸は、血液循環をよくする働きや、皮膚・被毛の健康維持にも有効です。
おすすめ
- 肥満気味・ダイエット中の犬
- 他の肉でアレルギーのある犬
- 被毛、皮膚のトラブル改善・予防
鹿肉(ベニソン)
鹿肉は、牛肉や豚肉に比べて2倍のたんぱく質を含んでいますが、カロリーは3分の1であり、脂肪にいたっては10分の1程度。
非常に高タンパクで低カロリー・低脂質なお肉です。
鹿肉の鉄分はヘム鉄で、体内への吸収がとても高い鉄分になるので貧血予防に効果的です。
また、コンドロイチン、グルコサミンの含有しており、骨・関節のケアにも有効です。
おすすめ
- 肥満気味・ダイエット中の犬
- 他の肉でアレルギーのある犬
- 関節トラブル改善・予防
羊肉(ラム)
ラム肉は他の肉類と比べて低アレルギーリスクであり、犬の必須アミノ酸10種類を全て含んでいるお肉です。
ラム肉には体内脂肪を燃焼させてくれる「カルニチン」という成分が豊富に含まれています。これには、コレステロールを下げる効果や、疲労回復・脳機能向上・心臓病動脈硬化予防があります。
また、血液にとって重要な鉄分や皮膚の健康に必要な亜鉛などのミネラルも豊富です。
おすすめ
- 肥満気味・ダイエット中の犬
- 他の肉でアレルギーのある犬
鴨肉(ダック)
鴨肉は、ビタミンB1・B2などのビタミンB群や鉄分を多く含有しています。
特に鉄分は、馬肉と同量の鉄分が含まれており、ヘム鉄で体にとりこまれやすい特性があります。
鶏肉と比べて、脂肪分はやや少なく、たんぱく質量は高めで、ヘルシーなお肉です。
アレルギーを誘発する抗原が鶏肉とは異なるため、鶏肉のアレルギーを持つ犬も安心して食べることができます。
魚
魚はタンパク質、カルシウムやタウリン、オメガ3脂肪酸が豊富に摂れるタンパク源です。
特に、オメガ3系の脂肪酸であるDHAやEPAが豊富です。丈夫な皮膚をつくり、艶のある健康な被毛の維持に役立ちます。
また、脳神経の働きを良くしたり、血液をサラサラにして血栓や高血圧の予防にも効果があります。
動物の肉全てにアレルギーを持つ犬でも、魚であれば動物性タンパク質を摂取することが可能です。
おすすめ
- 動物の肉にアレルギーを持つ犬
- 被毛、皮膚のトラブル改善・予防
犬に生肉を与えるのは大丈夫?
犬に生肉を与えても大丈夫です。
犬の祖先は狼であり、元々は肉食動物です。小動物などを捕獲し、生のまま食料としてきました。
そして人間と暮らすようになった現在、犬の食生活は大きく変化していますが、消化器官は当時とほとんど変わっていません。
生肉は犬にとって、一番消化吸収しやすく、最も適している食事といえるのです。
実際、生肉を与えることで健康状態がよくなったという声もよく聞きます。
生肉を与えることのメリットとしては、下記の4つ。
- 消化吸収が良く胃腸に負担がない
- 生きたままの酵素が摂取できる
- ミネラル・ビタミンなどの栄養素が豊富
- 口内環境の健康維持
どれだけ良質なドッグフードであっても一度は加熱処理するため、食物酵素は壊されてしまいます。
生肉の場合、生きた酵素、ミネラル、ビタミンなどの栄養素をそのまま摂取することでき、スムーズな消化吸収が可能です。
犬に生肉を与える際の注意点!
犬によっては、肉にアレルギーを持つ子や生食を全く食べ慣れていない子もいるため、急に生肉を与えるとお腹がびっくりして体調を崩す事もあります。
初めて生肉を食べさせる時は、ごく少量から始めましょう。
愛犬のウンチや体調の変化を見ながら徐々に量を増やしてあげると良いですね。
また、「加熱用」と表記があるお肉を生で与えるのは止めましょう。
鮮度が落ちた生肉には、寄生虫や病原性細菌が含まれている可能性もあり、かえって健康を害する結果にもなります。
人が生でも食べられるくらい新鮮なものを与える事が大切です。
また、生肉は犬にとって理想の食事ではありますが、生肉だけでは栄養が偏ってしまいます。
普段のドッグフードのトッピングとしあげたり、おやつとして与えたりすると良いかと思います。
愛犬の体重や健康状態に合わせて、カロリーを計算しつつ、生肉を上手に取り入れてみて下さい。
犬の栄養素「タンパク質」まとめ
犬の体づくりに大切な栄養素として、「動物性タンパク質」をご紹介しました。
もし、愛犬の被毛にハリ艶がなかったり、動きや反応が鈍かったり、どこか美しさや健康を失っているように感じたら一度食事の「タンパク質」を見直してみて下さい。
良質な動物性タンパク質を摂ることがで、改善されるかもしれません。
また、犬の体質や、犬種、年齢などによって1日に必要としている量には違いがありますので、愛犬に必要な量はどれくらいのかを把握し、与え方には十分に注意しましょう。
お肉が好きなわんちゃんのためにも動物性タンパク質を意識してあなたの愛犬に合ったドッグフードを見つけて下さい。